冬支度

お天気もあまりよろしくないですが、冬支度開始。フリースの服と、ブーツを引っ張り出してきて、夏の服をいよいよ片付けます。このほかは、本格的に寒くなる前にやっておこうってことで、お風呂のカビとりと、レンジフードの掃除も実施しました。やっぱ12月にするより楽ちんだー。


そんな午後、この美しい本が届きました。梅田啓子さんの第一歌集『ふたりご』です。


装丁は花山周子さん。


お嬢さんの書かれた口絵。


なんども涙ぐみながら拝読しました。こういうのって、久しぶり。


大変に僭越な言い方で恐縮ですが、ご本をいただいて拝読するときに、のめりこむように読んでしまうものとそうではないものがあって、この『ふたりご』は、まさに前者でした。封筒から取り出して、そのまま黙々と読みつづけ、気がついたら日が暮れていました。

私は、この作者のかたと数回のやりとりをしたことはあるのですが、実際におめにかかったことがありません。でも、その数少ないやりとりのいづれもが、とても暖かく心地よいものでした。いつかお会いできるかもしれないし、このまま一生会えないかもしれない。けれど、こうやってご本を拝読して、ああ、私はやはりこのかたのことが好きだなあと思いました。

茄子の実の地につくままに朽ちてゆく ひとつの町に母は生きたり

冬空に噴き上げいたる水ふいに止みて一気にわれも落ちゆく

今日ひとに触るることなき手のひらに湯に浮く柚子を握りしめたり

子のかたえ今日より眠るひとのいる 春の夜道を帰り来たりぬ

一合の米研ぐ指のたよりなさ硬めのごはんに柚味噌のせる

ひとり住みふたりになりてふたり増えいまはしずかにふたりに暮らす

ふたりごはわれの帰りを待ちていきチラシの裏に絵を描きながら

憎しみは舌苔のごと蔓延れり きれいなうたはもう歌えない

ぐったりとわが背にもたるる子の熱く急ぎ自転車漕ぎおり 夢に

後悔のなきよう言葉を残しゆく いつかその日の言質のために



梅田啓子 『ふたりご』